【実践大家コラム 3】収益不動産の真の実力を見極めよう②

前回は以下について記載しました。

●表面利回りや毎月のキャッシュフローだけでなく、「隠れた貯蓄」にも注目しよう!
●隠れた貯蓄=海面の下に隠れた部分=返済が完了した元金

今回は、具体的な例を踏まえて、下の氷山の図を見て行きましょう。

隠れた貯蓄=海面の下に隠れた部分=返済が完了した元金

海面より上に出ている部分の計算(CF)

数値で見た方が分かりやすいので、例えば、以下のような物件を購入するとしましょう。

●価格1億円、表面利回り8%の築古RC
●自己資金1000万円、銀行借入金9000万円
●融資期間25年、金利2%、元利均等返済
●税金や修繕などの経費率20%

すると、毎月のCFは以下のように計算することができます。

賃料収入:1億円×8%÷12ヵ月=66万円
借入金返済額:38万円(ローン返済アプリで計算)
経費:1億円×8%×20%÷12ヵ月=13万円
毎月のCF:賃料収入66-借入金返済額38-経費13
=毎月のCF 15万円

つまり、海面より上に出ている部分は月15万円ということですね。これは毎月大家が手にするお金なので、とてもイメージしやすいでしょう。

海面より下にある部分の計算(隠れた貯蓄)

隠れた貯蓄とは、ひと言で表現するなら「返済が完了した元金」です。

先の例で借入金返済額38万円と記載しましたが、この借入金返済額は以下の2つから構成されています。

借入金返済額38万円=利息分15万円+元金返済分23万円

このうち利息分15万円は銀行の取り分なので、大家の手元には残りません。
一方、元金返済分23万円はどうでしょうか?

入居者から頂戴する賃料が原資となって、毎月23万円の元金返済が進んで行きます。仮にこの物件を10年間保有したとすると、その間に返済する元金の合計は、元利均等返済の場合3077万円です。

何ゆえ月23万円×12か月×10年=2760万円ではなく、3077万円となるのでしょうか?
その理由は、元利均等返済の場合、借入金の返済が以下の図のように進むからです。金融機関への合計返済額(利息+元金)は毎月一定ですが、そのうち元金返済分は回を重ねるごとに増えて行きます。その結果、10年後の時点で「返済が完了した元金」の総額は、2760万円ではなく、3077万円となるのです。


上図は住宅金融支援機構より借用しました。

さて、今回の前提では、当初の借入金は9000万円としています。したがって10年後の残債は

当初借入金9000万円-返済が完了した元金3077万円=残債5923万円

となりますね。

そこで10年後にこの物件を売却したとしましょう。売却価格は購入時と同じ1億円とします。その時に売却益として手元にいくら残るでしょうか?
話を簡略化するために、仲介手数料や税金を無視すると、

売却価格1億円-残債5923万円=売却益4077万円

となります。この売却益4077万円のうち、1000万円は自己資金として最初に投入したお金ですから、正味売却益は、

売却益4077万円-自己資金1000万円=正味売却益3077万円

となります。この3077万円、どこかで見た数字だと思いませんか!
そう、先に述べた「返済が完了した元金」です。

つまり、返済が完了した元金3077万円は、大家が毎月手にすることはできないけれど、売却益として手元に入ってくるお金なのです。

元金返済分は利息分と合わせて毎月銀行に返済するため、あたかも消えてなくなったかのように感じられます。しかしながら実際は、消えたのではなくて、売却時に一気に手元に戻ってくるお金として、淡々と「貯蓄」されているのです。

しかもその貯蓄の原資は毎月の賃料収入です。入居者が大家のために、毎月貯蓄をしてくれていると捉えることができますね。

この返済が完了した元金を「隠れた貯蓄」と称した理由はここにあります。一旦手元から離れてしまうため見えにくいけれど、実はこっそり貯蓄されていて、あとから一気に戻ってくるのです。まさに海面の下にある大きな氷山ですね。

シン・キャッシュフローは物件の真の実力を示す指標

CFの最大化は不動産賃貸業を営む者にとって非常に重要です。潤沢なキャッシュを毎月得ることができれば、その分だけ経営が安定するからです。また、CFを貯えることで、次の物件の購入を早めることもできます。

その一方で、物件の実力を「CF+隠れた貯蓄」の合計値で評価することも大切だと思います。CFも隠れた貯蓄も、最終的には自分のお金になるからです。

そこでCFと隠れた貯蓄の合計値を、シン・キャッシュフロー(以下、シンCF)と呼ぶことにしましょう。最近公開されたシン・ウルトラマンにあやかりました。「シン」は「真実の真」を意味します。

シン・キャッシュフロー=CF+隠れた貯蓄

シンCFを計算することで、その物件を購入してから売却するまでの間に、大家が手にするキャッシュの総額を把握することができます。購入しようとしている物件の「真の実力」を把握することができるのです。

次回はさらに例を見ながら、シンCFについて詳しく見て行きましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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