前回までの記事で、物件の真の実力を見極めるためのシン・キャッシュフロー(以下、シンCF)という指標をご紹介しました。ポイントは以下のとおりです。
●表面利回り、月CFに加え、隠れた貯蓄にも注目しよう!
●隠れた貯蓄とは、返済が完了した元金のこと。CFのように毎月手にすることはできないが、売却時に一括して得ることができる
●シンCF=CF+隠れた貯蓄
●シンCFで物件の真の実力を把握しよう!
今回はシンCFを計算するための簡単な方法をご紹介します。
シンCFの計算式
シンCFの計算式は以下のとおりです。
シンCF=CF+隠れた貯蓄
CFとは大家が毎月手にするキャッシュフローのこと。また、隠れた貯蓄とは、返済が完了した元金のことでした。
通常のCFだけでなく、隠れた貯蓄も最終的には大家が手にすることになるので、それらの合計値であるシンCFは、物件の真の実力を評価するための指標です。
物件購入の際には、このシンCFにも注目しましょう!
モデルケース:築古RCマンションにおけるシンCF
一例として、築古RCマンションを前提にシンCFを試算してみましょう。前提は以下のとおりとします。
前提
●価格1億円、表面利回り8%の築古RCマンション
●自己資金1000万円、銀行借入金9000万円(元利均等返済)
●融資期間25年、金利2%、税金や修繕などの経費率20%
●10年後に1億円で売却

ステップ① CFの計算
大家が毎月手にすることのできるCFは、以下の計算式で求めることができます。
CF=賃料収入-借入金返済額-固都税や修繕などの経費
上記の築古RCマンションのケースでは、年間CFの計算は以下のようになりますね。
賃料収入:1億円×8%=800万円
借入金返済:年461万円(ローンアプリで計算)
経費:1億円×8%×20%=160万円
年間CF:賃料収入800-借入金返済461-経費160
=年間CF 179万円
この築古RCマンションを10年後に売却するので、保有期間中に大家が受け取るCFの総額は、
年間CF 179万円×10年=1790万円
となります。
* CFについては数多くの書籍やホームページで紹介されているので、ここでの詳細の説明は省略します。「不動産投資 キャッシュフロー 計算」というキーワードで検索すると、分かりやすく解説してくれたページがすぐに見つかります。
ステップ② 隠れた貯蓄の計算(=返済が完了した元金)
では、「隠れた貯蓄=返済が完了した元金」の計算はどうすれば良いでしょうか?
下図の青色の部分です。これはエクセル関数で簡単に求めることができます。
住宅金融支援機構より借用
今回の築古RCマンションのケースでは、金利2%で9000万円の融資を受け、25年間で元利均等返済します。この場合、1年目の元金返済分は以下の式で求めることができます。
=PPMT(0.02,1,25,90000000,0)
計算結果は -2,809,839円。
では10年目はどうでしょう?
=PPMT(0.02,10,25,90000000,0)
2番目の引数を1年ではなく、10年にするだけでOK。
計算結果は -3,358,018円です。
計算結果がマイナス表記となりますが、気にする必要はありません。そういうものなのだと思って、頭の中でマイナス記号を無視しましょう。
また、1年目と10年目の元金返済額が異なるのはなぜでしょう?
元利均等返済では上図のように、1年目よりも10年目の元金返済額の方が大きくなる仕組みなので、このような計算結果となります。
それでは、この築古RCマンションを10年後に売却した場合、10年の間に返済してきた元金の総額はいくらになるでしょうか?
それを知るには、上記の数式を縦に10個並べて合計すればOKです。
このケースでは、以下のとおり10年間の累計額は3077万円となります。

この築古RCマンションを保有している10年の間に元金返済が進み、借入金9000万円のうち、3077万円の返済が完了することを意味します。その結果、売却時の残債は、
当初借入金9000万円-返済が完了した元金3077万円=残債5923万円
となりますね。
ステップ③ シンCFの計算
上記①②の結果をまとめると以下のとおりです。
10年保有する場合のシンCF=10年間のCF+10年間の隠れた貯蓄
=1790万円+3077万円
=4867万円
シンCFの評価
この築古RCマンションを10年保有している間に、毎月のCFとして受け取るお金の合計が1790万円。売却益として受け取るお金が3077万円。合計4867万円の運用益が得られるという結果が出ました。
自己資金1000万円を投入して10年運用したら、4867万円の利益を手にするわけです。年平均利回りは実に49%。米国株式の代表的な指標であるS&P500の年平均利回りは7%ですから、不動産投資がいかに優れているかを示す数字だと言えますね。
今回は10年で計算しましたが、5年にするとどうなるでしょう?
以下にその計算結果を表記します。

5年、10年のどちらの年平均利回りも、代表的なインデックス株式投資S&P500の7%を大きく上回ります。
今回の築古RCマンションのケースでは9000万円という多額の融資を受けているためにこのような結果となりました。大きなレバレッジをかけることができる不動産投資ならではの魅力ですね。
次回は以下のケースについても計算して、その結果を見比べてみます。それぞれの特長がより鮮明に見えてきますよ。お楽しみに♪
ケース② 築古木造アパート
ケース③ 新築RCマンション
ケース④ 築古戸建
まとめ
シンCFは、大家が毎月手にするCFと、隠れた貯蓄(=返済を完了した元金)の合計値です。どちらも最終的に大家が手にするお金なので、物件の真の実力を示す指標であると言えます。
今回は築古RCマンションをモデルケースとして、シンCFを計算してみました。毎月のCFよりも、隠れた貯蓄の方が大きな数字となっていて、驚いた方もいることでしょう。「投資用不動産は売却してナンボ」と言われるゆえんです。
また自己資金1000万円に対する年平均利回りの大きさにも驚かれたかもしれません。「融資を受けてレバレッジをかけられる事こそが不動産投資の醍醐味である」と言われるゆえんでもあります。
次回は、モデルケースを築古木造アパートや、最近流行の新築RCマンション、築古戸建にまで広げて、それぞれの特長を比較してみます
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