

前回は4つの物件タイプごとにシン・キャッシュフロー(以下、シンCF)を計算してみました。結果は上図のとおりでした。
今回から3回に分けて、この計算結果をより深く考察してみます。
●築古RCマンション vs 築古木造アパート ←今回はココ
●築古木造アパート vs 新築RCマンション
●築古戸建 vs その他
モデルケースの前提
それぞれのケースは、昨今の市況を踏まえて以下のような前提を設けました。いずれも自己資金1000万円、10年後に購入価格と同額で売却する前提としています。
●築古RCマンション
– 価格1億円、表面利回り8%の築古RCマンション
– 自己資金1000万円、銀行借入金9000万円(元利均等返済)
– 融資期間25年、金利2%、税金や修繕などの経費率20%
– 10年後に購入価格と同額の1億円で売却
●築古木造アパート
– 価格5000万円、表面利回り10%の築古木造アパート
– 自己資金1000万円、銀行借入金4000万円(元利均等返済)
– 融資期間20年、金利2%、税金や修繕などの経費率15%
– 10年後に購入価格と同額の5000万円で売却
計算結果の考察:築古RCマンション vs 築古木造アパート
●大家が毎月手にする CF
築古RCも築古木造も、毎月のCFに関してはほぼ同等となりました。
今回のモデルでは築古RCの表面利回りを8%、築古木造は10%としています。表面利回りが高い築古木造の方が、CFには有利なはずです。
また、経費率は築古RCの20%に対して、築古木造は15%としています。経費率が低い築古木造の方が、CFには有利なはずです。
にもかかわらず、どうしてCFが同等になるのでしょうか?
それはRCの方が融資期間を長くとれるからです。融資期間が長いほど、毎月銀行に返済する金額は下がります。その結果、CFが同等となったわけです。
●シンCF
築古RCの自己資金比率は10%としています。一方、築古木造の自己資金比率は20%としました。築古RCの方が借入比率を高くできるという前提です。
一般的に築古RCの方が銀行評価が高いので、借入比率も高くできます。言い換えると、築古RCがより大きなレバレッジをかけていることになりますね。
その結果、築古RCの方が表面利回りが低く(マイナス2%)、かつ経費率が高い(プラス5%)にもかかわらず、隠れた貯蓄は大きくなりました。
シンCFも築古RCの方が大きいです。すなわち物件保有中に大家が手にするお金は、築古RCの方が大きいことを意味します。昔から築古RCが不動産投資の王道であると語られるゆえんです。
●CFと隠れた貯蓄の比率
築古木造のCFと、隠れた貯蓄の比率は半々となりました。
これは築古木造が毎月着実にCFを受け取りつつ、それと同等の金額を、隠れた貯蓄として積み立てていることを意味します。
一方、築古RCは隠れた貯蓄の占める割合が高くなりました。
築古木造と同程度のCFを受け取りながら、その1.5倍以上の金額を隠れた貯蓄に積み立てていることを意味します。
しかしながら、この隠れた貯蓄は売却時にならないと、手にすることはできません。今回のモデルケースの場合、築古RCと築古木造のシンCFの差は、売却時により大きなボーナスを得られるか否かの差であると言えます。
また、今回の前提では売却価格は購入価格と同じとしましたが、もしも売却価格が購入価格を下回った場合どうなるでしょう?
当然ながら売却価格が下がった分だけ、大家が手にする売却益は減ります。言い換えると、せっかく積み上げた隠れた貯蓄が吹き飛ぶことを意味します。
隠れた貯蓄が毎月のCFより大きくなることはしばしばありますが、売却価格の低下というリスクに常にさらされていることは肝に銘じておきたいところです。
このことから物件選びの際は、売却価格が下がらない、あるいは下がったとしてもその下落幅ができるだけ小さい物件に注目すべきであると言えるでしょう。例えば都心物件、全空物件、再生物件、土地値物件などがそれに該当すると思います。
●借入金に対するリターン
今回の前提では、築古RCの借入金が9000万円なのに対し、築古木造の借入金は4000万円です。築古木造の方が、より少ない借入金で築古RCと同等のCFを叩き出していることになりますね。
借入金が少なければ、それだけ次の物件の借り入れもしやすくなります。借入金という観点から見れば、築古木造の方が資金効率が高いと言えます。
●自己資金に対するリターン
自己資金に対するリターンという視点ではどうでしょうか?
借入金が9000万円だろうと4000万円だろうと、借りたお金であることには変わりはありません。
投入した自己資金はどちらのケースも1000万円です。自己資金に対するリターンという視点では、年平均利回りが示すとおり築古RCに軍配が上がります。
まとめ
いかがでしょう? それぞれの特長がより鮮明になったでしょうか?
一長一短があることをご理解いただければ幸いです。それをよく理解した上で、各々の状況に応じた投資計画を立てれば良いと考えています。
次回は「築古木造アパート vs 新築RCマンション」を考察してみます。
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