【実践大家コラム 9】物件タイプごとのシン・キャッシュフロー(RC、木造、戸建)④

前回は築古木造アパートと新築RCマンションを、シン・キャッシュフロー(以下、シンCF)の観点から考察してみました。今回は築古戸建を見てみましょう。

●築古RCマンション vs 築古木造アパート
●築古木造アパート vs 新築RCマンション
●築古戸建 vs その他 ←今回はココ

モデルケースの前提

それぞれのケースは、昨今の市況を踏まえて以下のような前提を設けました。いずれも自己資金1000万円、10年後に購入価格と同額で売却する前提としています。

●築古RCマンション
– 価格1億円、表面利回り8%の築古RCマンション
– 自己資金1000万円、銀行借入金9000万円(元利均等返済)
– 融資期間25年、金利2%、税金や修繕などの経費率20%
– 10年後に購入価格と同額の1億円で売却

●築古木造アパート
– 価格5000万円、表面利回り10%の築古木造アパート
– 自己資金1000万円、銀行借入金4000万円(元利均等返済)
– 融資期間20年、金利2%、税金や修繕などの経費率15%
– 10年後に購入価格と同額の5000万円で売却

●新築RCマンション
– 価格1億円、表面利回り6%の新築RCマンション
– 自己資金1000万円、銀行借入金9000万円(元利均等返済)
– 融資期間30年、金利2%、税金や修繕などの経費率15%
– 10年後に購入価格と同額の1億円で売却

●築古戸建
– 価格500万円、表面利回り14%の築古戸建を2棟購入
– 自己資金1000万円、銀行借入金なし
– 税金や修繕などの経費率10%
– 10年後に購入価格と同額の1000万円で売却

計算結果の考察:築古戸建 vs その他

昨今、築古戸建を購入する投資家が急増しているようです。少ない資金で始められる手軽さがあるので、多額の借り入れに抵抗がある人との相性が良いですね。また、金融機関が融資を絞っているため、現金買いが基本の築古戸建にシフトしている不動産投資家も増えているようです。

●大家が毎月手にする CF
築古戸建は、築古RCなどに比べ、毎月のCFという観点では見劣りします。これは、築古戸建が現金買いを前提としているためです。表面利回り14%と、他のどのケースよりも高く設定していますが、借入金がないためにレバレッジが効かず、このような結果となります。

毎月のCFが少々見劣りしても、借り入れというリスクをとりたくない不動産投資家にふさわしい投資対象だと言えますね。

●シンCF
今回の4つのモデルケースでは、この築古戸建は異色です。現金買いを前提としているので、借入金がありません。したがって隠れた貯蓄はゼロです。その結果、シンCFも少なくなります。

小さく始めたい、あるいは大きな借入金を好まない不動産投資家にとって、築古戸建はうってつけだと思います。毎月のCFも新築RCを上回ります。

ただし、隠れた貯蓄が無い分、物件を保有している間に大家が得ることのできるお金は、他の築古RCなどに比べてかなり少なくなります。借り入れというリスクをとらないのだから、致し方ないですね。

とはいえ、投入した自己資金1000万円に対する年平均利回りは13%。代表的な米国株式インデックスS&P500の7%に比べると、はるかに高い利回りです。

まとめ

4回にわたって築古RCマンション、築古木造アパート、新築RCマンション、築古戸建という4つのモデルケースをもとにシンCFを計算し、その結果を考察してきました。

毎月のCFだけを見ていると、見落としがちな事実を発見できたのではないでしょうか。また、それぞれに特長があることもイメージできたかと思います。

要は一長一短です。大きなレバレッジをかければ、その分だけ期待リターンも大きくなります。その一方でリスクも大きくなります。当たり前の事実ですが、具体的な数字で見ると、より鮮明になりますね。

自分自身の年齢、資産背景、ゴール、達成時期、リスク許容度などに応じて、最適と思われる方法を選んで行くしかありません。

不動産投資家の集まりに出向くと、「私は築古RC派!」「いやいや戸建サイコー!」などと盛んに議論される場面に出くわしますが、それは不毛な議論だと思っています。個々人の事情は千差万別です。誰一人として同じではないのですから。
同一人物であっても、最適な投資手法はステージが変わるごとに変化することでしょう。

大切なことは、良い物件にめぐり合うために、様々な角度から物件を評価できる能力を身につけることだと思います。

今回の一連の記事では、多くの人が見落としがちな「隠れた貯蓄」と、物件の真の実力を評価すするためのシン・キャッシュフローという指標について記載してきました。

先にも申し上げたとおり、隠れた貯蓄を一所懸命に積み上げても、売却価格が下がったら水の泡です。なので、価格が下がりにくい物件を買い、メンテナンスをしっかり行い、適切なタイミングで売るということが、とても重要となります。

せっかく手にした「隠れた貯蓄を受け取る権利」を、手放さないで済むようにしっかり運営しようと、いつも自分に言い聞かせています。

少しでもお役に立てたら幸いです。

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